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ブックレビュー「言葉の温度」
投稿者 : コネスト ソラミミ 2018-11-20
最近、人と話す時には、できるだけ、ゆっくり話すようにしています。 勢いに乗って暴走したり、調子に乗って失言したり、 はたまた言い争いになってしまうのを避けるためです。
こう書くと随分攻撃的な人間だと誤解を受けそうですが、 子羊のように大人しく温和な人間であることをはじめにお断りしておきます。
しかし、子羊のような私も「話す」となると自分勝手になることが、ままあり、 自分の話を聞いて欲しい、自分の意見を通したい、という欲が出てきます。
「言葉の温度」にはこうあります。 「何を話すかよりも、どんな風に話すかが重要で、どんな風に話すかよりも、何を話さないかが重要である 」
このエッセイには、所謂、ちょっといい話、はあまり出てきません。 筆者が実際に目にした耳にした場面で放たれた言葉の数々を集めて、 なぜ、この言葉が出てきたのだろう、と見つめなおす作業が繰り返されています。
これに倣って、自分がベラベラと話すのを止めて、人が発する言葉に耳を傾けてみると、 なるほど、色々と気づくことがありました。
人は「話す」という行為においては随分と利己的で欲深いものです。 言わなくていいこと、話さなくていいことを無意識に、あるいは意図的に放出しては、 満足しています。
筆者はこれは防ぐ(?)ために、自分がよくしゃべってるなーと思う時には、 言塚(언총、オンチョン)つまり言葉の墓(말무덤、マルムドム)を思い浮かべるそうです。 말무덤は慶尚北道(キョンサンプット)の醴泉(イェチョン)郡に実在しています。 言い争いばかりしている村人たちを仲裁するために、文句はこの말무덤に捨てなさい、 と旅の知恵者が作らせ、以来、村人たちは言い争いをすることなく仲良く暮らした、という伝説があるそうです。
言いたいことを飲み込むばかりではストレスが溜まりそう。 でも、それをやみくもに他人に撒き散らすのも大人気ない。 말무덤 、いいアイディアです。
BOOK DATA タイトル: 言葉の温度(언어의 온도) 著者: 이기주 出版年:2016 価格:13,800원 ISBN: 9791195522125
韓国語中級以上。元新聞記者らしい、簡潔な文章が読みやすいです。以前、ご紹介した「言葉の品格 (말의 품격)」の前に出版された本作、実はこちらの方が大ヒットしました。「言」「書」「行」の章立てになっており、「言」には事例が丁寧に集めてあって一番おもしろいです。だんだんネタがつきるのか、後半、映画の話ばっかりになってくるんですよね。映画評論じゃないっつーの(あ、こういう批判めいた態度が余計な一言…)。
編集部:ソラミミ |
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コメント(2)
18.11.21 / bianさん
こちらの編集部日記を読ませて頂きました。
とても考えさせられる内容のお話ですね。
私は韓国語を習った事がないので、残念ながら、この本を読む事はできませんが、
ソラミミさんの書いた文章だけでも、十分心に響きました。
言葉を発する時に、何も考えずに喋っていましたが、確かに、言わなくていい事まで、日常的にぺらぺら喋っているような気がします(笑)
茶道で、「間」というものを習っているはずなのに、全く生かされていません…(泣)
最近では、スマホが普及し、誰でも指先を少し動かすだけで、ネットの世界で、発言できる世の中になりましたね。
実際に会っていない見知らぬ人と人が、ネット上の世界で争いをする光景を目にする事も多くなりました。
話す時と同じように、言葉の温度差、相手の事、を考えながら、発言したいものですね。
「言葉の墓」…私も、日常的に思い出すように心がけたいと思いました。
今日は、朝からとても良い文章を読ませて頂きました。
ありがとうございます。
これからも、編集部日記、楽しみにしております。
18.11.21 / コネスト ソラミミさん
コメントありがとうございます。
韓国の本でも日本の本でも、いろいろと心に残る言葉があり、
お国違えど、共感する内容もたくさんあります。
韓国語継続勉強中で、つたない読書量ですが、少しずつご紹介したいと思います。
励ましのお言葉有難うございました。