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韓国に初めて来たのは学生時代でした。学校の交流行事の一環で、韓国語はほとんど話せなかったものの、チューターの韓国人学生との交流が楽しかったことを覚えています。
ある日、日本人学生数人で韓国人学生をご飯に行こうと誘ったときのこと。彼は食事後、自分の分を支払いもせず、とっとと店を出て行ったのでした。
学生でもあり、ワリカン文化の定着した私たちは驚愕のあまり何が起こったのか理解できず、普段は親切で紳士的な彼がまさかそんな行動に出るなんて思いもよらず、でもその場では何も言えず…。
一晩悩んだ末、日本人学生の面倒を見てくれていた日本語が堪能な韓国人の先生に相談に行きました。


「韓国では誘ったほうがおごることが多いのでね。親しい仲なら、おごってもらうのも普通だし、むしろそれが親しみの表現だったりするのよ。彼に悪気はなかったと思うわ。」


そんなこと納得できないとばかりに激昂寸前の私たちをちょっと困ったような様子で静かに見守っていた先生の顔、ウン十年昔のことがこの本「日本人、心理の箱」を読んで思い出されました。


日韓それぞれの人たちにとって「日本」「韓国」が身近な海外旅行先であることはニュースなどでご存知だと思いますが、特に日本を旅行する韓国人(3,288,900人)は韓国を旅行する日本人(1,451,565人)の2.3倍です。韓中が蜜月と言われていますが中国を旅行する韓国人(698,100人)は日本への訪問者数に比べると約5分の1です。
(参考: 韓国観光公社「外来客入国・国民海外旅行客および観光収入・支出動向」2016年1月~8月統計より)


そんな訳で、韓国人の中には、日本に友好的であるだけでなく、日本ツウの人も結構いるのです。ドラマ、アニメなどのエンタメ系は昔からですが、最近は旅行経験が豊富な人が多いので、グルメなんかの知識や関心が本格的になってきた気がします。


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そんな最近の風潮に物申す(?)「日本について大体しか知らないくせに、すごくよく知っていると錯覚している韓国社会に対して、日本をまともに知らせる教科書がこれだ!」「韓国人が知らなかった日本人の24の心理コード」みたいなコピーのついた一冊がこれです。



ちょっとでもディスってたら噛み付いてやると、まったく意味不明の敵愾心を燃やして読み始めたら、ものすご~く真面目~な内容でした。

SBSの特派員である著者が日本での駐在体験をベースに、社会学的に日本の現代社会の事象を解説してくれます。草食男子とか壁ドンとか。
正直おもしろくなくて(○○大学○○教授の研究○○によると…がいっぱい出てくる)途中でやめようかと思いましたが、「2章コミュニケーション」を読むうちに冒頭のようなかつての体験が呼び覚まされたのでした。







韓国にある程度住んでいると「韓国のことが大好きなんですね!」「すっかり馴染んでますね!」とよく言われます。あながち間違ってはいないのですが、でもそう言われるのに非常に違和感があります。
それは、韓国人が理解できない、韓国社会が理解できないという解消されないストレスをずっと抱えているからだと思います。同じ日本人でも他人のことは理解できないので当然ですが、カルチャーギャップは消えてなくなることはないでしょう。


この本は、そんなカルチャーギャップを韓国人の視点から丁寧に解説し、両者に悪気はないけどズレてしまう事例なども紹介しています。「だから日本人はこうなんだ」ではなくて、「だから両者にギャップができるんだ」という内容になっているからか、自分自身が韓国と日本の違いをおもしろがったり、戸惑ったり、腹を立てたりしていたことを素直に振り返らせてくれました。


「慣れ」というのは怖いもので、 何事も感じなくなったり、面倒くさくて放置あるいは無関心になってしまいます。
韓国ツウぶらないで、小さな隙間や段差を真摯に観察できるようになれたらいいな、と思ったのでした。



BOOK DATA

タイトル: 日本人、心理の箱(일본인 심리상자)

著者: 유영수

出版年:2016

価格:15,800원

ISBN: 9791160070231


韓国語中級以上。辞書なしチャレンジにおすすめ。「미・야・자・키・하・야・오、ミ・ヤ・ザ・キ・ハ・ヤ・オ、あ、宮崎駿か。もう漢字で書いてよ」みたいに突っ込みたくはなるものの、 日本がネタなので頭の中にするする入ります。

「若者文化」「コミュニケーション」「家庭と日常」「大地震と不安」の4章から成っているので、興味のあるところからどうぞ。


編集部:ソラミミ

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