自分の感情や環境によって、受け止め方が変わるので、
同じ小説を読んでも昔と今では、心に残る部分が全然違うというのはよくあるお話です。
さて、この「娘について」。
いつ読むのかによって、どう心に響くかは人により様々であろうことが想像に難くありません。
登場人物は四人の女。
母
娘
娘の恋人の女
母が勤める介護施設の入所者である老女
母は娘が同性愛者であることに悩み、「人並みな」結婚を望んでおり、事あるごとに娘と対立します。母娘の葛藤、家族の物語。
と、紹介できるのですが、それよりも四人の女、それぞれの生き様に注目です。
30代、60代、(多分)80代の各世代の女たちが抱える現実がべったりです。
非正規職、結婚、生活不安、老後、老い、介護など。
「誰かの面倒を見るという苦労。自分ではない誰かを世話するのは至難の業。傍から見れば美しく高潔に見えるかもしれないが、過酷で惨いということを娘とあの子に見せたかったのかもしれない」
ひょんなことから老女を自宅で介護することになった母が娘と娘の恋人の女に対して思いを馳せる場面です。
人間の想像力は限界があるので、当事者にならないとわからないことは多いでしょう。
だから、この小説はどの切り口で当事者であるかによって、受け止め方が大きく異なると思います。
これは何だろう?あれは何だったんだろう?私はどうなるだろう?
頭の中がぐるぐるしてきます。
ストーリーだけ追っかけると地味でネガティブなので「物語」を求める人にはお薦めしません。
すごくおもしろいから読んでみて、と誰かに薦めたくなるような作品ではありません。
でももし、嵌る要素があったなら、独りで煩悶する時間は悪くないと確信します。
BOOK DATA
タイトル: 娘について(딸에 대하여)
著者: 김혜진
出版年:2017
価格:13,000원
ISBN: 9788937473173
韓国語上級以上。ですが!亜紀書房から日本語訳が刊行されています。日本語版はまだ読んでいないので、どんな感じかお伝えできませんが…。今、検索したら書評がいっぱい出てきました。ぜひ、そちらをご参考ください。韓国では「82年生まれキム・ジヨン」も含まれている「現代の若い作家」シリーズの1冊で、著者は注目されている若手作家の一人です。
編集部:ソラミミ