ビールの美味しい季節です。
「韓国のビールは味が薄~い」なんて声もありますが、それはそれで美味しいです。
軽い飲み口と爽やかなのど越しで、スイスイと頂けます。
一方、韓国は韓国は今、空前のクラフトビールブームです。
ちょっとお酒を飲めるところなら、どこにでも置いているほどです。
同時に輸入ビールも種類が増え、価格も手ごろになり、
「韓国のビールは味が薄~い」なんて不満をもらさずに済むようになりました。
しかし、ソウルの片隅には40年近く前から生ビールの鮮度を守り、季節ごとの温度を守り、
店での客の自由を守り(飲み屋で大統領の悪口を言ったらしょっ引かれたというのは軍事政権時代には本当にあった話)、
安酒のお供の代表格ノガリ(今も相場は1,000ウォン)を初めて売り、
ホプ(호프)を守ってきた人がいたのです。
『乙支OBベアー』
噓をつかない、誤魔化さないって難しいですね。
みんながここの社長さん(今は二代目)みたいにビールを大事にしてきたならば、
韓国のビールも、もっと評価が違っていたでしょうに。
ビールに限らず、顧客の期待を裏切らず、飽きさせず、長く続けるのは至難の業です。
(そして従業員を大切にする!)
そんな離れ業をやってのけている韓国全国の老舗食堂を紹介しているのが、
「老舗の商法」です。
ビジネス書に分類されていますが、経営のコツみたいなものはあまり触れておらず、
多分に感情的です。
それでいながら、お店の歴史が韓国の近代食文化の流れの中で紹介されているので、
メニューやお店が時代の流れとともにどう受け入れられたり、苦労したりしたかがわかるので、
市場ニーズや環境の変化をいかにキャッチするか、
なんてことを示唆しているの??
と思ったら、 自分がいつも焼酎を飲むときには、この店では何食べる、みたいな話を筆者はちょいちょい挟んできます。
しかも筆者は50歳を過ぎて、常連のおじさんたちの目を気にしなくて済むようになり、
一人で焼酎(소주)をゆっくり飲めるようになったとやけに嬉しそう。
いいなあ。私もやりたい。
乙支路(ウルチロ)も鍾路(チョンノ)も一人焼酎もまだまだハードルが高いです。
本として、ちょっぴりまとまりが悪い部分もありますが、結構、混濁した感じが、古い食堂のそれと重なっていて、不思議に魅力的。
商売繁盛で未来に続く老舗も紹介すれば、後継者に悩む老舗も紹介されていて、
胸がちょっと詰まるような気分も 。
ノスタルジーだけじゃ商売は成り立たないもんね。
読後には要焼酎。
美味しいものは大事にしたいけれど、「食」って時代性が強いものだと改めて感じました。
BOOK DATA
タイトル: 老舗の商法(노포의 장사법)
著者: 박찬일
出版年:2018
価格:16,800원
ISBN: 9791186560693
韓国語上級以上。店舗の「舗」の字は韓国の漢字では「鋪」と書きます。間違いではありませんので、悪しからず。グルメ本ではないので、おそらく意図的だと思いますが、料理のカットがほとんどありません。それが一層、想像力をかきたてられて美味しそうな感じに仕上がってます。
また、韓国の近代食文化の歴史は日本の歴史と切っても切れない関係。韓国グルメの代表サムギョプサルも日本がいなければなかったかも。折に触れ、隣国とのつながりがこんなにも多岐に渡るのかと驚くことがしばしばありますが、日韓史の側面からも興味深い本でした。
編集部:ソラミミ