この冬は本当に寒く、体感気温マイナス20度の極寒日も数日あり、水道凍結になった家庭も多く、 洗濯機が使えなくてコインランドリーに行列、などと通常の冬とは違っていました。
ソウルがシベリアのような寒さ、ということで「ソベリア」なんて言葉がニュースになったものです。
3月になると厳しい冬も終わりを告げ、ようやくソウルに春がやってきました。
肌寒さはあるものの、風にはすでに春の匂いが混じっています。
そんな春の風に誘われるようにピクニックに出かけようとしている人(?)がいます。
海苔のキム君です。
キム君がゴザ(巻きす)を持って出発!道中、友だちを誘います。
ご飯のパッポ、たくあんのタンムジさん、ほうれん草のシグムチ嬢、ウクレレを弾くハムメン、にんじんのタングン兄弟、たまごのタルギャルジダン。
目的地の丘に到着すると、春満開の花盛り!
すると、花に見とれる間もなく、強い風がビューッとキム君一行に突進。
「어머머,어떡해!(オモモ、オットッケ!、あらら、どうしよう!)」
キム君と友だちは丘をくるくるっと転がり落ちると、一本の美味しいキムパッになりましたとさ。
「くるくる巻き、キムパッ」の著者はこれがデビュー作であるチェ・ジミ。
明るい色彩と想定通りの展開で、胸のあたりがぽわんと温まる一冊です。
皆さん、キムパッ(韓国式海苔巻き)はお好きですか?
私は最近、好きになりました。
時間のない時に食べるもの、という程度の認識でしたが、平凡だけど美味しいキムパッに出会い、キムパッの奥深さに目覚めました。
キムパッの具材は珍しいものは何もありませんが、下ごしらえが重要。
例えば卵。卵焼きのまま入れるか、錦糸卵にして入れるかの違いで食感に大きな違いが生まれます。
にんじんやほうれん草も塩をしておきますが、その塩梅が大事。
さらに、その具材をどれくらいの割合で、太さで作るのか、
調和がとても大切です。
などと、こだわりだして、味比べをしてみると、
具材の調和を実にうまく考えてあるお店とそうでないお店で全然味が違うのです。
この絵本でも、キム君の友だちは、みんな性格が違いますし、ピクニックに行く目的も違います。
でも、それぞれの個性があるから、ピタッとはまると、ひとつの美味しいキムパッになるのです。
自分ばっかり出しゃばっても美味しくならないし、
協力してくれる人がいないと、キムパッすら作ることができません。
深いな、キムパッ。
しばらくブームは続きそうです。
BOOK DATA
タイトル: くるくる巻き、キムパッ (돌돌 말아 김밥)
著者: 최지미
出版年:2017
価格:12,000원
ISBN:9791158360535
韓国語初級以上。たくあんのタンムジさんの仲間がなぜ、ジャージャー麺の山を滑り降りて、真っ赤なチャンポンのスープにドボンと飛び込んでいるのか?この意味がわかった方は、韓国グルメ通です。絵本は文字を追うだけでなく、絵が表現していることも合せて楽しめるのが魅力。お国柄や文化の違いを楽しめる絵本は韓国のお土産にもおすすめです。
編集部:ソラミミ