現在、韓国に居住する外国人は200万人を越え、人口の4%を占めるほどになっています。
韓国に居住する外国人のうち、一時的な滞在(転勤による駐在など)ではなく、生活基盤を韓国に置く人々を移民と呼びますが、1990年代には農村に嫁ぐベトナム人花嫁が圧倒的であったのが、2000年代には中国、フィリピンの人々が増え、移民の出身地が多様になってきました。
そんなこんなで韓国政府も移民の人々が韓国社会に適用できるように韓国語教室を開き、韓国の社会への知識と理解を深めるために様々な教育プログラムを整備しています。
→結婚移民の方はコネストおかかの「ハッピースタートプログラム」を参照
そのうちのひとつに法務部(日本の法務省に該当)が運用する社会統合プログラム(Korea Immigration & integration program)があります。
「韓国語(事前試験でパスすれば講義は免除)」と「韓国社会の理解」の講義を修了し、試験と面接に合格すると、ビザ申請やビザ変更の際に特典をくれるというプログラムです。
プログラム受講&受験・合格すると「ちゃんと勉強して、韓国に適応しようとがんばってるよ、この人!」と法務部からお墨付きをもらえるので、永住権や帰化が必要な方々はこぞって申請されているようです。
私は一時的な滞在の居住外国人であり移民ではありません。永住権も帰化も必要ないのですが、ある程度の年数を過ごしているとプログラムを受ける資格が生じることから、数年前に受講しました。
ここで使われる教材が「韓国社会の理解」です。
一般の書店では販売されていないのですが、小学6年生の社会の教科書のような内容だと思っていただけるとよいでしょう。
その時のクラスメートは60歳を越えたロシアの音楽家のおじいさん、難民として逃れてきた父親を家族で追いかけてきたイランの16歳の高校生、韓国人と結婚したベトナム女性、年齢不詳のモンゴル女性、韓国の大学に通う中国人カップル。
皆さんの背景と詳細はわかりませんが、国には帰れない(帰らない)何かの事情のために韓国で暮らしを立てようとしていることは確かで、ただの外国人居住者ではなく、移民が何を意味しているのかがよくわかりました。
ある「社会」で生きていくには無言の同意や共通理解が求められる場面は多々あります。
旧正月や秋夕、歴代大統領、京釜高速道路の設立年、韓国の義務教育期間などなど、知ってどうする?と思うようなことでも、知っていないとコミュニケーションや社会儀礼上、困ることだってあります。
小学6年生の社会の教科書だと言いましたが、自国であれば小学生でも知っていることが、外国人であるが故に知らず、苦労することも多いのです。
カラフルで一見するとちょっと能天気そうな「韓国社会の理解」ですが、そこに紹介されている韓国社会の様々な事柄が、韓国に暮らしている多くの移民が直面する、あるいはクリアしなければならない現実の一端を示しているような思いがしました。
因みに私は韓国への関心事が韓国グルメなどに偏っていたので、プログラムの参加は体系立てて学ぶよい機会になり、知ったかぶりをするのはやめようと心を入れ替えたものの、「外国人だからよく知らないんですよね」「韓国語が下手だからわかんないんですよね」と言い訳が図々しくなっただけで、学習効果のほどはよくわかりません。
BOOK DATA
タイトル: 韓国社会の理解(한국사회이해)
著者:法務部出入国、外国人政策本部
出版年:2012
価格:非売品(韓国移民財団 02-2643-6577)
中級以上なら辞書なしで読めます。構成は文化、歴史、地理、経済、法律となっており、教科書だけに網羅的、これさえ読めば韓国一般常識はクリア!です。韓国に来て間もない留学生の方には韓国語の勉強にもなり、韓国社会の謎も解け、一石二鳥です(すみません…非売品)。教科書なのでエンターテイメント的要素はなく、面白みには欠けますが、写真が豊富なのでとっつきやすくなっています。これに似た内容を書店で手に入れるなら小学生の社会や地理の教科書がおすすめです。
編集部:ソラミミ