「답답하다(タッタッパダ)」という韓国語をご存知でしょうか?
日常的によく使われますし、知っていると便利な言葉です。
意味がいくつかあり、代表的なのは次の4つ。
(1)息が詰まる、重苦しい感じ(身体的に)
(2)胸が詰まる、じれったいような感じ(感情的に)
(3)融通がきかない、歯がゆい(性格的に)
(4)空間が狭くて、窮屈な感じ(物理的に)
胸を叩きながら「아~답답해」なんていうシーンは韓国ドラマでもよく見かけますが、
「답답하다」の決定版、オンパレードみたいなのが、
小説「南漢山城(ナマンサンソン)」です。
小説の舞台は1636年朝鮮王朝16代仁祖の時代、
大陸では、明を滅ぼした清が台頭。
明を支持していた朝鮮に対し、清に従うよう要求するが、朝鮮が拒否。
清は武力によって、これを従わせようと20万の大軍を率い出兵、
瞬く間に大陸から朝鮮半島にわたり、首都ソウルに接近。
王仁祖はソウルを逃れ、わずか1万余りの兵力で南漢山城に篭城。
しかし、47日間で朝鮮は清に降伏する…。
いわゆる「丙子胡乱(ビョンチャホラン)」を描いたお話です。
すでにお察しの通り、篭城モノなので物理的にも「답답하다」ですが、
季節は冬、寒い寒い韓国の冬を思い出してください。
重苦しく、息を吸ったら肺が凍りそうな冷たい空気が「답답하다」です。
しかも、食糧はない、兵力はない、リーダーもいない(内部でもめてるから)、
この状況を打開する気概もない(兵士は諦めちゃってる)。
これでもかというくらい「답답하다」の連続です。
王の名で檄文を発し、地方からの援軍を募ろうなんてアイディアも出ましたが、文章を作るのに揉め、
やっとできたと思ったら、
それを持って城外に出る能力があって信頼のおける人材がいない。
「답답해 죽겠어!
(じれったくてたまらん!)
」
清の皇帝も首をかしげます。
「攻めても来ない。交渉にも来ない。何にもしない。なんで??」
清の皇帝が「답답해서」動いたので、いともあっさり終わり。
そのため、日清戦争で清が日本に破れるまでの約250年間、
清と朝鮮の臣従関係が続きます。
そもそもの発端は、王仁祖が当時の国際情勢を見誤ったことが大きな原因なのですが、
・リーダーの舵取り失敗
・リーダーを支える周辺の諍いと不調和
・やる気のない、やる気のなくなる環境形成
・高まる閉塞感
あれ?なんだか身近にありますよね?こんな話。
エピソードを美化せず、悲嘆せず、
ヒーローを勝手に生み出してないのが、この小説のいいところですが、
本当に「답답하다」です。
BOOK DATA
タイトル:南漢山城(남한산성)
著者:김훈
出版年:2007
価格:13,000원
ISBN:9788956250595
朝鮮王朝を取り巻く当時の外交事情、地位や役職などの予備知識がないと読み進めるのに相当苦労します。「丙子胡乱(ビョンチャホラン)」とは何かをおさらいしてから読み始めることをおすすめします。この小説を原作とした同名映画が今秋公開予定なので、映画で作品の世界を味わうのもいいですね。イ・ビョンホン、キム・ユンソク、パク・ヘイル、コスなど豪華
男前
出演陣です。ガイドさんにいろいろ説明してもらって、雰囲気も味わうならコネストの「
南漢山城 午前半日ツアー
」がおすすめです。
編集部:ソラミミ