我輩はコネスト特別捜査官Yoメン。
普段はブラインド越しにソウルの街を観察しているが、ひとたび事件が起きたり、気になることがあれば、どんな難題だろうが即座に現場に赴いて解決する。そんな我輩のことを人々はYoメンと呼ぶ。
今日、4月30日に、ひっそりとその役目を終える列車がある。セマウル号だ。1969年に登場した特急列車で、我輩がはじめて韓国で乗車した2003年は列車の色が緑色だった。その後、青色に塗装がかわり、気動車から機関車牽引に変わっていった。当時はソウルから釜山(プサン)まで最速約4時間で結ぶ夢の超特急だったのだが、
韓国高速鉄道KTXの登場により、運行規模が徐々に縮小され、また車両の老朽化により、最新型の車両
ITX-セマウル号に徐々に置き換えられはじめてきた。最後は
龍山(ヨンサン)駅から長項(チャンハン)線経由の益山(イクサン)駅行きが1日5往復するだけになっていたが、本日をもって廃止となった。
我輩は、このセマウル号での列車旅がとても好きだった。セマウル号の最大の魅力は座席の素晴らしさ。車内には日本のJRのグリーン車に相当する「特室」と、指定席に相当する「一般室」の2つがあるのだが、「一般室」でも、座席間の幅がとても広く、シートもふかふかしていて、当時日本の窮屈な特急列車と比べ「何と素晴らしいことか!」と感銘を受けたものである。KTXも一般室は窮屈で座席も良くないが、セマウル号の座席の素晴らしさをもう一度体感したく、乗車してきた。
◆龍山駅
龍山駅に到着
機関車牽引
塗装はかなり剥げ落ちている
今後はもう見られない行き先表示盤
食堂車が連結
機関車を見ると、そのカラーからどうもムグンファ号をほうふつさせるものがあり、最後くらいセマウル号ならではの気動車を見たかったが、もう無いので仕方ない。プラットホームでは、我輩のほかにも熱心に一眼レフで写真を一生懸命とっている、いわゆる鉄っちゃんが数人いた。
◆乗車
食堂車の様子
時間がなかったので、永登浦(ヨンドゥンポ)駅まで
一般室の様子
相変わらずフワフワしているシート
(短い)足もたっぷり伸ばせる間隔の広さ
久しぶりに乗車したセマウル号のシートは、かつて感銘をうけたシートそのままだった。座席が広い分、収容人数が少なくなるので収益があがらないのは良くわかるが、素晴らしいシートだった。
◆出発
いよいよ出発
漢江(ハンガン)を渡る
永登浦駅到着
ここから乗り込む客もたくさん
今までありがとう!
龍山駅から永登浦駅までは、約7分。本来ではあれば、もっと乗車したかったのだが、スケジュール上、この列車にしか乗れなかったが、最後のセマウル号の勇姿はしかと記憶にとどめ、永登浦駅では列車が見えなくなるまで見送り、かつて韓国の鉄道輸送を支えた偉大なる列車に敬意を表したい。
ありとあらゆる地方都市を訪問しながら、現地の観光名所・名物料理を紹介する特別任務。韓国の地方各地の情報が日本で広まるその日まで、Yoメンが休むことはない。