我輩はコネスト特別捜査官Yoメン。
普段はブラインド越しにソウルの街を観察しているが、ひとたび事件が起きたり、気になることがあれば、どんな難題だろうが即座に現場に赴いて解決する。そんな我輩のことを人々はYoメンと呼ぶ。
主に地方捜査に精を出しているYoメンだが、居住地であるソウルをないがしろにしているわけではないぞ!ソウルでの最重要任務であるFCソウル・チャンピオンロードだが、昨年見事Kリーグ・チャンピオンに輝き、アジアのクラブチャンピオンを決定する2013年AFCアジアチャンピオンズリーグ(以下、ACLと表記)の出場権を獲得したFCソウル。現在、リーグは優勝の望みが低く、来期のACL出場権確保が現実的な目標だが、ACLは目標にしていた優勝に向け、なんとなんと本当に決勝まで進出したのである!そんなわけで、今回は地方任務をお休みし、FCソウルのACLにおけるここまでの道のりをざっくりと振り返ってみようと思う。
<グループステージE組>
第1戦 2月26日(ホーム) 江蘇セインティー(中国) 5-1 勝利
第2戦 3月12日(アウェー) ブリーラム・ユナイテッド(タイ) 0-0 引分け
第3戦 4月2日(ホーム) ベガルタ仙台(日本) 2-1 勝利
第4戦 4月10日(アウェー) ベガルタ仙台 0-1 負け
第5戦 4月24日(アウェー) 江蘇セインティー 2-0 勝利
第6戦 5月1日(ホーム) ブリーラム・ユナイテッド 2-2 引分け
アジア各国の32チームを4チームずつ8つに分けて行うグループステージ。FCソウルはE組となり、中国の江蘇(カンス)セインティー、タイのブリーラム・ユナイテッド、そして日本のベガルタ仙台と同組みとなった。初戦は今からさかのぼること約8ヶ月前の2月26日。寒さ・2013年の公式戦初戦などが心配されたが、新加入のユン・イルロッの大活躍もあり、5-1の大勝でスタートした。
グループステージで一番苦戦したと思うのは第3戦、ホームに迎えたベガルタ仙台戦。2-0で優位に試合を進めていながら後半残り時間5分で、ウチの若いゴールキーパー(GK)が一発レッドカードで退場。すでに交代枠を使い切っていたため、急造GKを作り、PKでまず1点返される。さらに残り時間、ベガルタ仙台の柳沢などの波状攻撃に、いつ失点してもおかしくない状況になってしまったのだが、全員守備で何とか凌いで逃げ切りに成功。この試合をものに出来たのがグループステージ突破の大きな力になったと思う。
第5戦目でグループステージ1位突破を決め、最終戦は主力を休ませながら、若手の2軍を出して経験を積ませるということまで出来た、上々のグループステージであった。
初戦は江蘇セインティーに5-1。 幸先の良い大勝スタート。 |
ベガルタ仙台には苦戦。 ホームで危うく引き分ける可能性もあった・・・。 |
グループ1位突破が確定していた最終戦。 ブリーラムユナイテッドには2軍で臨み引き分け。 |
|
グループステージを突破し、 選手たちに決勝ラウンドがんばれと鼓舞! |
<決勝ラウンド・BEST16> 第1戦 5月14日(アウェー) 北京国安(中国) 0-0 引分け
第2戦 5月21日(ホーム) 北京国安 3-1 勝利 決勝ラウンド初戦の相手は中国の北京国安で、中国と韓国の首都決戦となった。ここから先はアウェーゴールが有利となる、ホーム&アウェーのトーナメント方式で2試合合計で負けたら敗退となる、まさに「絶対に負けられない戦い」である。
アウェーの北京で上手い事、引き分けてソウルに戻ってきた第2戦。サポーターの間では「アウェーで引分けたのだから、ホームなら余裕で勝てる」と思って臨んだ試合だが、なんと開始早々に失点を食らってしまい0-1。その結果、2点以上入れなければ、敗退が決まってしまうFCソウルはここから脅威の猛反撃。まず1点返して同点に。そしてACL大活躍中のユン・イルロッが逆転弾を決め、サポーター席は喜びのあまりハチャメチャになる!そして試合終了直前に、勝利を決定付ける3点目が決まり、大逆転勝利でBEST8へと進出。この日の夜は仲間内は眠れなかった!(ちなみに、この試合で喉を痛めたYoメンは3日間ほど声が出ず、表向きには「風邪をこじらせまして・・・」と乗り切ったが、ここでバラさなくても多分バレてたと思う。)
決勝ラウンド初戦、かなり苦戦した北京国安戦。 |
劇的な逆転勝利で準々決勝進出決定! |
<決勝ラウンド・準々決勝> 第1戦 8月22日(アウェー) アル・アハリ(サウジアラビア) 1-1 引分け
第2戦 9月18日(ホーム) アル・アハリ 1-0 勝利 準々決勝の相手は、昨年のACL決勝に進出したサウジアラビアのアル・アハリ。昨年、決勝で蔚山現代(ウルサンヒョンデ)に敗れ、準優勝になったアル・アハリは、今年こそは優勝!と打倒Kリーグといきこんでいた。初戦は、なんとスタジアムから160km離れた砂漠のど真ん中にホテルが指定されるなど、アウェーの洗礼を見事に受けたが、1点奪えたのが精神的に大きくプラスに働き、第2戦のホームでも安定的な試合運びで上手く勝利。過去これまで準々決勝止まりだった球団初のACL準決勝進出である。
<決勝ラウンド・準決勝> 第1戦 9月25日(ホーム) エステグラル(イラン) 2-0 勝利
第2戦 10月3日(アウェー) エステグラル 2-2 引分け 準決勝の相手はイラン・テヘランのエステグラル。チームの選手のほとんどがイラン代表選手ということもあり、サポーターの間では事前にかなり緊張が走っていたのだが初戦は2-0で快勝。テヘラン10万人の大観衆に囲まれて行うアウェーでの試合の事を考えると、もう1点欲しかったところだが、アウェーでの試合は先制されながらも、キャプテン、ハ・デソンの芸術的ループシュートで追いつき、アウェーゴールを手にしたところで、試合はほぼ決まったのだった。
ついに決勝進出。リーグとカップ戦(途中敗退)、ACLでの中東遠征を繰り返しながら体力的に厳しい中、皆が本当に頑張って手に入れた決勝だ。これで韓国のKリーグ勢は、5年連続ACL決勝進出の快挙を達成。今年もKリーグの連盟が、柔軟に日程を変更してくれるなどの配慮があったが、球際の強さや最後まで諦めない闘志など、アジアの舞台で強い韓国Kリーグを今年もアピールした形となったのではないだろうか。この辺りのアジアの中におけるKリーグの特徴は、個人的にもう少し深く掘り下げて研究してみたい課題である。
準々決勝は昨年のACL準優勝のアル・アハリ |
準決勝は、ほぼイラン代表チームのエステグラル |
<決勝ラウンド・決勝戦> 第1戦 10月26日(ホーム) 広州エバーグランデ(中国) 2-2 引分け
第2戦 11月9日(アウェー) 広州エバーグランデ 今年は何故か決勝戦も、ホーム&アウェーの2試合行われる事になったのだが、その決勝の相手はアジアの「マンチェスター・シティ」とも称される、大富豪チームの広州恒大(クァンジョウ・エバーグランデ)。準決勝で日本のJリーグ強豪、あの柏レイソルを2試合合計8-1で撃破した強敵である。監督はサッカーファンなら誰もが知るイタリアの名将リッピ監督で、攻撃陣の外国人選手3人の強力な破壊力と、韓国代表DFキム・ヨングォンの外国人4名が特に注目されているチームだ。
決勝初戦の舞台、ソウルワールドカップスタジアムにはFCソウルサポーターはもちろんのこと、普段サッカーにあまり興味のない一般のソウル市民や、Kリーグの他チームサポーターも、この日だけはFCソウルを韓国代表とみなして各地から応援に駆けつけてくれるなど、観衆は久々に5万人越えをした。試合開始前のスペシャル映像を見ながら、ここまで8ヶ月間の死闘を全部思い出し、不謹慎にもYoメンは涙を流す。一方、対岸にはアウェー席を真っ赤に染めた広州エバーグランデのサポーターの大群が集結。後で聞いた話では、本国のコアサポーターよりもソウル在住の中国人・留学生をかなり動員したとの事だが、それにしてもかなり声が出ていて、さながら中国の歴史映画に出てくるような歓声であった。アウェーではこれ以上の歓声を聞くのかと思うと、ぞっとしてしまう。
試合は全体的にFCソウルがやや劣勢で押し込まれる展開となってしまった。失点して追いつき、また失点して何とか追いついて2-2の引分けで終えた。この決勝戦の大舞台で、大活躍したのは浦和レッズから完全移籍してきた日本国籍のエスクデロ。1ゴール・1アシストと、みなぎる闘志がありありと感じられ、サポーターの多くが賞賛し、浦和レッズファンの間でもかなり話題になったことであろう。
決勝戦ホームは5万人以上のサッカーファンが集結。 ASIA No.1のパフォーマンス。 |
両チームの選手入場。この8ヶ月の記憶が 走馬灯のように蘇り、試合前にふと涙する。 |
対岸には真っ赤に染まった広州の応援団。 ソウル在住の中国人留学生も多数動員された。 |
これまでのどの試合よりも声を上げた 我輩を含めたFCソウルサポーター「守護神」。 |
ホームで2失点し、アウェーの広州・天河(テンハ)体育中心体育場では、真っ赤に染まった大観衆の歓声の中、戦力的にも苦戦が予想されるが、FCソウル優勝への条件はただ勝利のみ。球団もアジア制覇に向け格安弾丸ツアー企画や、個人旅行者で事前申請者に限りチケット無料配布など、全面的にバックアップしてくれている。FCソウル関係者みんなの夢、アジアチャンピオンまであと1試合。トロフィーはもう目の前だ。これまで「ソウル劇場」と呼ばれる数々の逆転劇を繰り返してきたチームを信じ、Yoメンは今週、広州に乗り込む。興味のある方は、9日の土曜日。日本・韓国時間の21時からのACL決勝戦に注目していただきたし。
ありとあらゆる地方都市を訪問しながら、現地の観光名所・名物料理を紹介する特別任務のほか、FCソウルがアジアチャンピオンに輝くその日まで、Yoメンが休むことはない。
-----以下、11月11日(月)追記
香港のお隣・広州。ダイナミックなアジアンパワーが 感じられた大都市だった。 |
真っ赤に染まった4万人超の天河スタジアム。 広州恒大、優勝おめでとう! |
11月9日(土)中国・広州での第2戦目は、真っ赤に染まった4万人の観衆の中、ソウルサポーターはたったの450人で、警察に囲まれた厳戒態勢の中での応援だったが、最初から最後の最後まで諦めることなく応援してきた。広州のアウェーでは1-1で引分けたため、ルール上で負け、あと1点足りなかった・・・。優勝した広州恒大にはおめでとうと言いたい。我々にとって結果は残念であったが、海外遠征という貴重な体験が出来たし、FCソウルの大躍進のおかげで2013年は幸せな1年となった。アジアチャンピオンへは来年以降また挑戦しようではないか。