我輩はコネスト特別捜査官Yoメン。
普段はブラインド越しにソウルの街を観察しているが、ひとたび事件が起きたり、気になることがあれば、どんな難題だろうが即座に現場に赴いて解決する。そんな我輩のことを人々はYoメンと呼ぶ。
さて諸君。最近、カメラ愛好家たちの間で「芸術マウル(マウルは村の意)」が再び注目を集めている。それまでソウルの芸術マウルと言えば
梨花洞(イファドン)の芸術通り
や、弘済洞(ホンジェドン)の
ケミマウル
が有名だったが、1ヶ月前あたりから
青坡洞(チョンパドン)
をはじめソウルの各所で芸術マウルが作られたのだ。そこで早速、新しく完成した芸術マウルの現場をいくつか見に行ってみたのだが、正直なところ、どうもインパクトが弱かった。そこで今回は芸術マウル好きな方にオススメしたい、我輩のとっておきの秘蔵スポットを1つ、紹介してみることにしよう!
そもそも芸術マウルはソウルだけでなく韓国の全国各地に点在する。最近ではドラマ『カインとアベル』、『製パン王キムタック』のロケ地としても登場した清州(チョンジュ)の「水岩(スアム)コル」も人気が高い。そんな全国の芸術マウルの中で、我輩が最も心を惹かれたのは釜山(プサン)にある「
太極道(テグット)マウル
」だ。日本ではまだ馴染みがないかもしれないが、韓国内では各種メディアにたくさん登場し、カメラ愛好家の中では知らない者はいないほど有名な芸術マウルである。
1950年代に太極道という新興宗教を信じる人たちの集団村としてスタートした「太極道マウル」は、2009~10年に区が支援し、芸術家と住民たちが1つずつペンキを塗って今の姿が完成した。
釜山地下鉄
1号線の土城(トソン)駅からタクシーを拾って丘を登っていくこと数分、料金にして3,000ウォン程度のところに位置するカムジョン小学校付近が「太極道マウル」の全景を眺められるスポット。そこから見下ろせる様々な色の壁や屋根、青色の水槽が織り成すキャンバスは一体全体どう表現したら良いのやら・・・感動のあまりつい言葉を失ってしまった。一つ一つの家がおもちゃのレゴのようにも見えてしまった。
ただし「太極道マウル」は観光地ではない。実際にご年配の方を中心に約1万もの人が実際に生活をしている空間だ。細い路地を歩いてみると、いつの間にやら人の家に足を踏み入れてしまっていたり、家々の洗濯物や料理の準備などの様子をいとも簡単に垣間見る事ができてしまう。我輩も実際に訪れて写真を撮っておきながらこう言うのも何だが、よそ者がワイワイガヤガヤと日常の生活空間を壊すのは立場を変えてみると、どうも申し訳ない気持ちになってしまう。帰り際、小学校前から地元の人たちとマウルバスに一緒に乗り込み、そんな事を自ずと思ってしまったのだった。
最近はソウルに限らず全国どこへ行っても再開発、再開発で、古い町並みをいっぺんに更地にしては高層マンションを建てるのが主流だ。しかし再開発とは違い、古い街を残しつつ且つその街を元気付けるという「保存と再生」のモデルとして注目されているのがこの「太極道マウル」だ。全国各地にある芸術マウルは単に壁にペンキを塗って装飾するだけでなく、こういう「保存と再生」をテーマにしてプロジェクト化されたケースが多い。そんな事を感じながら、韓国の芸術マウルにふと立ち寄ってみてはどうだろうか。
Yoメンの活動範囲はソウルだけではない。釜山だろうが済州島(チェジュド)だろうが、任務遂行のためには、どこへでも行く。
新しい任務が次々と舞い込んでくる日々。Yoメンが休むことはない。