先日お尻の部分が擦り切れたズボンを持って韓国の「スソンチッ」に行った。
「スソンチッ」とは日本語にすると「修繕屋」で、韓国の街を歩けば個人経営の小さなスソンチッをたくさん見つけられる。梨大(イデ)なんかにはこのスソンチッがずらっと並んだエリアもありますよね。
こうした街のスソンチッの風景は大体ドコも同じで、こぢんまりとしたお店の中にはたくさんの布や糸と一緒に、お客さんから預かったであろうこれまたたくさんのズボンやらジャケットがかけられている。
そしてお店の一角には年季が入ったミシンと、それからミシンよりも年季が入っているのではないかという、
お年を召したおばあさん(もしくはおじいさん)がちょこんと座ってガタガタとミシンで繕い物をしたり、
暇な時には近所のお茶飲み仲間と世間話に花を咲かせている。
これがスソンチッでよく見る光景だ。
今回tjbangが入ったお店も、やはりよく見るスソンチッそのままみたいなお店だった。
眼鏡をかけたおばあさんにズボンの10センチほど擦り切れた部分を見せて「いくらくらいかかりますか?」と、聞くとおばあさんはちょっと考えながら、「うーん、そうだねえ3000ウォンだねえ」と答えた。
そう、韓国のスソンチッは日本に比べると安いのも特徴である。
「今12時だから夕方までにやっておくよ」そして仕事が速い。
「安い、速い」ときて、さらにその仕上がりも素晴らしいのである。
約束どおり夕方に取りに行き、「ほらできたよ」と言っておばあさんが手渡してくれたズボンを見ると、
あて布がされていて、幾重にもきつく縫い付けてあり、間近で見ないと繕ったとわからないほどの、正に「職人技」だった。
「これぞプロの仕事!」と感動しながら、ちょうどその時着ているジャケットが少し大きめだったのを思い出したtjbangは、「ひょっとしてこういう上着も丈つめとかできますか?」と聞いてみた。
ジャケットを脱いで手渡すと、おばあさんは「まあできなくはないけどねえ」と、物差しをあててなにやら測りはじめた。と、突然何かを思い出したのか、「あ!そうだ・・・」と自分の背後にかかっているたくさんのズボンや上着の中からtjbangが着ていたジャケットと似たような色のジャケットを取り出した。
「これちょっと着てご覧よ。うん、そうそう・・あ、ピッタリだね。よしそれ持って行きなさい。いやいやいいのよ。
それあたしの息子のなんだけどね、在日韓国人のお嫁さんと結婚して今日本でがんばって働いてるのよ。前一度帰って来た時に『直して』って持ってきたんだけど、どうせ帰ってくるの当分先だしね、こうしてピッタリ合ったんだから着れる人が着ればいいのよ」
息子さんには悪いと思いながらも、結局ご好意に甘えてジャケットを頂いてしまった。
「韓国は情の国」だと聞き、今までもいくつかの情に触れてきたことはあったけれど、まさかスソンチッで「母の愛情」に触れるとは思いもしなかった。
この一件でtjbang、ドラマでも小説でも「親子もの」には弱いので、なんだかホロリとしてしまった。
仕事柄動きやすいラフな格好をしていることが多く、なかなか頂いたジャケットを着る機会はなさそうだが、ここぞという時に大事に着させてもらおうと思っている。
編集部 tjbang