お酒を行儀良く飲みたいときは、仁寺洞(インサドン)に行くようにしている。
大勢で生ビールを豪快に乾杯したいとき、あるいはマッコリのまったりした甘さで、徐々にわけがわからなくなりたいときがある。一方、気心の知れた友人と「しらふ以上、ほろ酔い未満」を維持しながら、なめらかな会話を楽しみたいとき。その、35%くらいお酒の入った状態が「行儀良く飲む」の定義だ。
そんなときにぴったりなのが、仁寺洞の伝統茶屋なのだ。
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仁寺洞は昼と夜の顔ががらっと変わる街だ。
韓国らしい雰囲気が観光客にも人気で、昼間は常に多くの人々で賑わう仁寺洞。メインストリートには工芸品や骨董品の店が並び、枝分かれした路地には韓屋(ハノッ)を利用した食堂がある。
これら土産物店などは多くが21時程度に店じまいとなり、夜の街は一見閑散とした印象となる。だが目を凝らすと、民俗酒店と呼ばれる昔ながらの居酒屋、そして伝統茶屋がぽつぽつと灯りをともしている。
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一見「SEOUL NOBODY」感が漂う 22時の仁寺洞メインストリート |
路地の明かりで、昼間とは 別の趣が醸しだされている |
夜まで営業する伝統茶屋 (写真は「インサドン サラムドゥル」) |
民俗酒店はわかるとして、伝統茶屋といえば昼間のイメージだろう。ところがどっこい、仁寺洞の伝統茶屋は伝統酒やビール、ちょっとしたおつまみも置かれており、実はアフターナインも利用できる店が少なくない。(同様の傾向は、懐かしのコーヒーショップにも見られる。喫茶店が飲酒の場も提供するという構造は、韓国ではかつてポピュラーだったんじゃないだろうか)
伝統茶屋の夜利用がいいなと思うのは、客が多すぎず、かつ主客層が落ち着いた年代なので、店が騒がしくないところ。お酒を飲みたくないときはお茶を注文できるところ。また手づくりの伝統茶にこだわっている店の場合、珍しい伝統酒を味わえる点などだ。
ちなみにqingのお気に入りは、メインストリートの安国駅側の入口近くにある、「又泉(ウチョン)」という店。橙色の明かりが柔らかな店内には、伝統茶としても人気の五味子(オミジャ)を使用したお酒(8,000ウォン ※2014年2月時点)や、淫羊霍(ウミャンガッ;イカリソウ)と呼ばれる薬草のお酒(7,000ウォン)が揃う。
また、ここで必ず頼んでしまうのが、店で炊いた小豆を使ったパッピンス(7,000ウォン)。他の店とは異なり餡に甘味が入っていないため、意外や意外、お酒との相性もなかなかだ。平日は深夜1時程度まで営業しているとのことで、ゆっくりと時間を過ごせる。
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建物の2階にある「又泉」
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素朴な店内は、いかにも伝統茶屋という感じ
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石油ストーブとラジオ放送のBGMが心地よい
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伝統酒を注文したらつまみに生栗(右)を勧められた
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梅茶を使った伝統茶カクテル(8,000ウォン)も
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豆の味がしっかりきいた絶品ピンス
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もちろん昼もいいけれど、夜も楽しめる仁寺洞の伝統茶屋。夕食に韓定食を食べ、二次会で利用するというのもおすすめだ。
酒が進むと、近くの民俗酒場や和信屋台村、または鍾路(チョンノ)の繁華街に足をのばしてしまい、結局は「行儀良く飲む」でもなんでもなくなる可能性が高いが、それも想定内として、機会があれば試してみてほしい。
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