西村(ソチョン)にはときどき足が向かってしまう。
一番の理由は、漫画☆☆先生のコミックが定期的に流れてくるという、とんでもないアート書専門の古書店のせいだが、景福宮(キョンボックン)の左側であるここら辺は、アトリエやギャラリー、カフェが最近増殖していて、ちょっとした散策にいい。
今回行ってきたのは「保安旅館(⇒位置)」。政治的な含みも感じる大層な名前は、青瓦台が近いという立地も関係しているのだろう。日本支配期に建てられて以来80年近く営業を続けてきたここは、現在はアート作品の展示や公演などが行なわれる、一風変わった文化空間として機能している。先週8月19日(木)からは、「盲者たちの都市(ヌンモンジャ ドゥレ トシ)」と題した、10人の作家の合同作品展が開かれている。
作品もさることながら、それらが置かれている状況が面白かった。作りが小さく、木の廊下と階段がある室内は、昔ながらの下宿を彷彿とさせる。そんな以前の雰囲気を残しながらも、真っ白に塗られている部屋、小さな覗き窓でのみ外部とつながった部屋、壁がぶち抜かれて骨組みだけになっている部屋などなど。部屋は様々な形に変化しており、宿泊客とはまた別の客が出入りする空間になっていた。
そういえば、近現代の建築とアートが結びつく例はここだけではないよな、と思う。
保安旅館から景福宮を挟んで対角線上にある、「機務司(キムサ)」──元国軍機務司令部;軍の情報機関の中心があったところ(⇒位置)──も、2012年を目標に国立現代美術館のソウル分館を作ろうと工事が始まった。2009年の末には建物まるごと利用して大規模な展覧会が開かれていた。
また1925年に建てられたソウル駅の旧駅舎も、文化複合空間に生まれ変わらせようと、リモデリング(改修工事のこと)の真っ最中。工事に入る前に最後の一般公開も行なわれた。
その建物がもともと持っている文脈や時間なんかに、アートという異質なものが入ってきたときの化学変化は、なんだか面白い。そうした動きってちょこちょこあるのだけれど、また機会があればお伝えできたらと思う。
ともあれ、保安旅館の今回の企画展は9月11日(土)まで(12:00~21:00、土曜日17:00~パフォーマンスあり)。時間がある人は、一度訪れてみてほしい。
─保安旅館の様子(展示品は実際に行ってからのお楽しみ)─
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元客室が展示会場になっている |
旅館当時の看板 「未成年者の入室はしない、させない」 |
骨組が露わになり、廃墟のような雰囲気 |
─2009年冬、機務司での展示会「信号弾」の様子─
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機務司の巨大な建物が丸ごと会場に |
グロテスクながら目を見張る作品も |
廊下も幻想的に装飾されていた |