2019年新春、 値上げや民間マッチングサービス導入を前に、揺れる韓国のタクシー業界。
日本では数えるほどしか乗ったことがなかったタクシーですが、韓国では日常的に週に3回以上は乗車しています。
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タクシー乗り場のタクシー
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日本でタクシーに乗るときも、自分でドアを開けそうになる人多数
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昨年「ケナリも花、サクラも花」というエッセイを読んだ際、1990年代の韓国タクシーの様子に驚きました。相乗りが普通で、乗車する客よりもタクシー運転手が優位で、お客を選んでいたというのです!
いまや韓国では相乗りは考えられず、ついこの間タクシーアプリが開始して普及し、サービスが改善されたと思ったら、Uberのようなマッチングサービス導入反対で、ストライキとして使わない運転手もいたり。
めまぐるしく変動する韓国タクシー業界のこれまでと今の瞬間を、ひとかけらでもひろって紹介したいと思い、この機にアンケートを実施しました。アンケートにご協力くださった62名の皆さん、本当にありがとうございました!
1.アンケートに協力くださった方
62人のうち、男性18人、女性が44人。韓国語ネイティブ38人(男性17人、女性21人)、
韓国語ネイティブ以外(日本語ネイティブ、中国語ネイティブ)は25人でした。
ソウル・ソウル近郊(職場がソウル)在住者は54人、忠清南道(チュンチョンナンド)在住が8人でした。
2.タクシーをよく利用しますか?
「一ヶ月に1回以上」という回答が、全体の50%を締めました。次に多いのは
「半年に1回程度」で約30%。 そして、「一週間に1回以上」、
「一年に1回以下」、
「一週間に3回以上」と続きました。
「一ヶ月に1回以上」の割合を
男女別に見ると、男性は44%、韓国人女性では50%、韓国語ネイティブ以外では70%を越えました。
3.よく利用する/利用しない理由はなんですか?
利用しない理由としては、ソウルでは地下鉄やバスなどの公共交通手段が便利で安いからという回答が圧倒的でした。韓国語ネイティブでは自家用車があるからという回答も。
利用する理由としては、2人以上で乗れば公共交通手段とほぼ値段が変わらない、終電を逃したとき、公共交通手段で行きにくい場所に利用などがありました。
珍しい回答では、外出しないから、1人で乗るのがこわいから(以前乗ったタクシーでのトラウマ)なども。
また、普段は使わないけれど首都圏以外の地方や旅行先ではよく利用するという回答や、女性の回答では体調が悪いとき、荷物が多いとき、子連れ、酷暑や極寒など天候がよくないときなどもありました。
4.タクシーアプリを使っていますか?使用頻度はどれくらいですか?
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タクシーアプリ、カカオタクシーは右側
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「このタクシーはカカオコールを受けません」と表示
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現在地と目的地を入力すれば、周辺のタクシーが反応して自分の位置まできてくれるタクシーアプリ。利用している、利用したことがあるという人が全体の約60%でした。
使用頻度に関しては、いつも利用している、場所や時間帯によって利用する、前は利用していたが今は利用しない、などさまざまでした。
韓国のタクシーアプリの代名詞ともいえるのが「カカオタクシー」で、今回のアンケートでもタクシーアプリを使用したことのある人のうち、1人を除くすべての人がカカオタクシーを利用していました。
5.タクシーで遠回りされない、ぼられない対策があれば教えてください
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韓国の大きな道路
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地方によって初乗り料金に違いが
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地図アプリで事前にどんな道を通るか、料金はどれくらいかを調べ、運行中もその道からそれないか確認する、が一番多い回答でした。カカオタクシーを使うことでぼったくりを防止できるという意見も。
そのほか、よく知っている道ならあらかじめ伝える、ナビ通りに行ってくださいと頼む、乗車してすぐ基本料金が正規の値段か、メーターの動き方がおかしくないか確認する、何かあったときのために運転手の名前とナンバープレートをチェックするなども。
韓国語ネイティブ以外の回答として、外国人とばれないようあまり喋らない、在韓生活が長いことを自然にアピールする、知り合いの韓国人に頼んで電話で運転手に行き先を告げてもらう、運転手に聞こえるよう韓国人と電話する、などがありました。
ほかに、運に任せるしかない(!?)、遠回りしていることを指摘するとスピードを上げて危ないことがあったので言わないほうがいい、観光客にとっては道路に一方通行やUターンの道などがあって分かりにくい、ぼられたところで日本より安い!などの意見もありました。
6.これまで乗ったタクシーについて何か思い出があれば教えてください。
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極寒の雪は溶けた後が怖い
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田舎の風景
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こんなことがあった!と話したくなる韓国タクシーでの悲喜こもごも。今回のアンケートで一番聞きたかったのは実はこの質問でした。約40人の方が自分の体験談を語ってくれました。
中には、とりあえず喋らないという方もいらっしゃいましたが…そういえば、そもそも一度もタクシーに乗ったことがないのでアンケートに答えられないという方もいらっしゃいました。
良い思い出
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映画「タクシー運転手」
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時々見かける、手をつないで歩く仲良しアジョッシ
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・メーターを点けずに走っていたことに最後に気付き、安くしてくれた運転手さんがいた。
・体調が悪い時にタクシーに乗ったらすごく心配してくれて暖かい缶ジュースをくれ、ありがたかった。
・子連れで乗ったら、タクシー必要なときはここに電話して、と名刺をくれた。
・出勤するときにタクシーに乗ったら運転手が友達のお父さんで驚いた。会社までお金をもらわずに連れて行ってくれたので、あとで友達に手作りパンを渡してお返しした。
・酒に酔った夫と家に帰ろうとタクシーに乗ったが到着しても夫の体を支えきれず。運転手さんがおんぶして家まで連れて行ってくれた。恥ずかしかったがとてもありがたく、手数料として多めに払った。
・雨がたくさん降った日、タクシーを待っていたらタクシーに乗っていた女性が自分の立っている前で降りて運良く乗ることができた。タクシーに乗ると、運転手がさっき降りた女性はもう少し乗って行く予定だったのに私を見て目的地より先に下りたのだと言った。その女性に感謝を伝えられず残念だった。
・タクシーの運転手の等級について話をした帰り道、まさにAAA等級のタクシーに乗り、タクシー運転手とその話で盛り上がった。
お疲れ様です…
・よく身内の自慢話をする人がいる/身の上話を聞かされる。
・年配の運転手では政治について語る人がいるが聞くのがつらく寝てしまう。
・タクシー運転手がカカオカップルサービスによるタクシースト問題について一生懸命語ったが、反応に困った。
・息子2人と一緒にタクシーに乗ったら、運転手がなぜタクシー運転手をはじめたのか話し出した。自分も男の子2人を育てあげ、結婚のときに家を買ってあげたら老後資金がなくなり、タクシーの運転手をはじめたのだという。運転手にかける言葉が思い浮かばず、また自分が慰めることができるという立場でもなかった。
旅行で
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春の済州島
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冬の江原道
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・地方ではタクシー運転手にグルメ店を聞くとだいたいおいしくて満足。しかし慶州(キョンジュ)でタクシーに乗ったとき、慶州にはグルメ店は無い!と言い切られた。
・済州島(チェジュド)でタクシーに乗った時、周りの観光地に絡んだ話など親切に説明してくれた。
・公州(コンジュ)に行ったとき、タクシー運転手が聞いてないのに有名な観光地について楽しそうに紹介してくれた。
・束草(ソクチョ)に旅行に行ったとき、現地の人推薦の観光地や飲食店を教えてもらい、助かった。
・旅行先の江陵(カンヌン)、慶州、公州では観光情報(グルメ店、行事情報、見どころ)などをくれて助かる。
良くない思い出
・目的地を聞いてから乗車拒否された。
・スマホ見ながら運転する業務停止レベルの人がいた。
・運転手が遠回りしたのに気づいたので言ったら怒って降りろと言われた。
・酒に酔ってタクシーに乗ったとき、会社に忘れ物をしたのに気づき、待ってもらうため上着をタクシーに置いていった。戻ったら、上着に財布が入っていると思ったのか、タクシーが姿を消していた。
・盆唐から金浦に行くとき、タクシー運転手がナビに出たルートより自分の知っているルートが速いというので任せた。結果、いつもより時間とお金をとられた。
・運転手がずっと彼氏はいるのか、連絡先を教えてくれとセクハラ発言をしてきて、気分が悪くて怖くて、タクシーに一人で乗るのが怖くなった。
危機一髪
・トランクに荷物を入れてもらっていたが、降りて荷物を降ろそうとしたら運転手が急いでいたのかそのまま発進し、追いかけて走った。
・タクシーに乗って、職場に遅刻しそうだといったら早く運転してくれて奇跡的に遅刻しなかった。
・差し迫った列車の出発時間をタクシーの運転手に伝えたら速かに運転して駅に定刻に到着したことがある。
・空港までの弾丸タクシー。死にたくなくてシートベルトをした。
・夜1時過ぎに仕事を終えてタクシーに乗ったらスピードを出しすぎで命の危険を感じた。それから地下鉄の終電までには必ず帰るようにしている。
・汽車の時間を告げると猛スピードで信号無視までして、怖くて取っ手にずっと掴まっていた。
・レースカー並みにスピード出しすぎで、友達と声も出せずに無言で顔を見合わせシートベルトをしっかり締めて、取っ手に捕まっていた。
そこじゃないんだ!
・弘大(ホンデ)と言ったのに建大(コンデ)に行ってしまった。
・ロッテホテルへと言ったら乙支路(ウルチロ)のロッテホテルではなく蚕室(チャムシル)のロッテホテルに着いた。
・新村(シンチョン)へ行きたかったのに新川(シンチョン)へ行かれたことがあり、「新村ロータリー」など具体的な場所を言うようになった。
・望遠洞(マンウォンドン)に行ってほしいと頼んだとき、タクシー運転手が年をとっていて望月洞(マンウォルドン)に行った。その後は○○区をつけて言うようにしている。
自分じゃないんだけど…
・明洞(ミョンドン)で外国人がタクシーに乗ろうとしたら反対方向だと断られ、乗車拒否だと怒っているのを目撃。
・友達が息子の嫁になってほしいとしつこく電話番号を聞かれていた。
・友達が遠回りされて運転手とケンカして怪我をした。それから遠回りされても怒らせないよう、お腹が痛いからここでおろしてほしいとか、メーターが壊れているのかと思ったなどと言うようにしている。
個性的な運転手
・韓国のタクシーは乱暴な運転が目立つが、ある初老の運転手さんが交通標記を丁寧に説明してくれ、またそれを遵守する姿勢に感銘を受けた。が、日本では当たり前のことだった。
・昼はゴルフコーチが本業、夜はタクシーで小銭稼ぎしてるという人がいた。車内に可愛い人形がいっぱい釣り下げられてデコレーションされていた。
・コンサート会場まで、広域バスの代わりにバスを待っていたファンを集めてタクシーに乗った。運転手の趣味でタクシーの音響装備が本格的で、大音量でMVを聞かせてくれタクシーの中からコンサートが始まった。
外国人限定?
・子どもの頃習ったという日本語の歌を歌ってくれた。
・運転手の中国語自慢を聞いた。
・日韓関係について意見を求められる。
・日本に親戚がいるのだが、何年も連絡が取れてないので、探して欲しいという捜索依頼。
・日本人女性を紹介してほしいと名刺を渡された。
・日本人なのにタイ人だと思われた。
・家族が日本にいることや、旅行で日本に行った話をしてくれる。
・友達とタクシーに乗った時、日本人と分かったらX JAPANの曲を流してくれた。
・空港からホテルへ移動時に利用したタクシー運転手が、日韓夫婦だからと家族の話をしてくれて、親切だった。
以上、アンケートの内容でした。私も、タクシー運転手と日韓の新興宗教の話をしたり、語学堂に通っていたときには複数の運転手から、外国で長く生活したんだね~韓国語が外国人みたいと言われたことがあります(なぜ韓国人と思い込み、外国人だと思わないのか非常に疑問)。
アンケートを実施するなかで、最近はこちらから話しかけないと話しかけてこない運転手が多く、少し寂しいという在韓長い日韓夫婦の奥さんもいらっしゃいました。
その方によると、やはり1990年代は相乗りはごく一般的に行われていて、タクシーを止めて行き先を告げると、運転手の行く方向があえばのせてもらい、メーターを見ながら降りるタイミングをはかり、運転手が提示する金額を払っていたとのこと。
たった20数年でこんなにも激変したのかと末恐ろしい気もするのですが、これからタクシー業界がどう変わっていくのか楽しみでもあります。
最後になりましたが、今回で編集部日記をほかの方にバトンタッチします。これまで編集部日記を書くにあたってご協力くださった方々、お読みくださった方々、本当にありがとうございました!
これからも変わらず天安-ソウル間を移動しておりますので、どこかでまたお目にかかれることを願って…。
編集部:ふぐやん