オッパとは?
韓国ドラマが日本で流行し、「韓国女性は恋人もオッパ、お兄さんと呼ぶらしい」なんてぼんやりした理解のまま、韓国で暮らし始めました。しかし、「オッパ」とは?お店のアジョッシ(おじさん)にオッパと呼びかけると安くしてくれるとか、老いも若きもオッパと呼ばれてやにさがっている姿を見掛けるような。
オッパという言葉には、単に「お兄さん」という意味以上の力があるのでは、それは一体なんなのか!?と思い続け、語学堂6級の時ついに疑問が爆発。つまるところ、オッパって何なの!?と先生方に聞きまくった結果、「恋人になりうる範囲」というお答えを頂きました。
女性からは、相手のことをもっと知りたい、もっと家族のように親密に付き合いたい、という気持ちの現われ。男性にとっては、頼られる存在、妹のように思って世話をしてあげる近しい存在となり→恋人になりうる範囲!となってしまうようです。
実際、韓国人女性も、オッパと呼びたくない人からオッパと呼んでと言われると、大変困ってしまうのだとか。韓国人男性も、自分の恋人である女性がほかの男性をオッパと呼ぶ(親戚以外)のは嫌がる人が多いよう。
衝撃かつ、納得のいくお答えでした。全ての人がこう考えるというわけではないのでしょうが、女性から安易にオッパと呼ぶのは考え物かもしれません!
呼称(ホチン)あれこれ
初対面でいきなり年齢を聞く韓国。おまけに韓国人は数え年で年齢を答えるので、韓国に来てから一気に年をとったように感じて、聞かれるのが嫌になった時期がありました(笑)。
しかし、儒教文化が色濃く残る韓国では相手の年齢がわからない、というのは何とも居心地が悪いことだそうです。相手に何と呼びかけたらいいかわからない状態だとか。
一歳でも年上であれば、名前呼びは失礼にあたる。かといって「~さん」という呼びかけはほぼ職場内でしか使われません。プライベートで関わりがある人に対してさん付けすると、非常に距離があり、冷たい感じを与えてしまうそう。
特に、見た目で判断のつかない同年代では微妙なところです。同級生か年下なら愛称付けか呼び捨て、年上ならお姉さんかお兄さんという呼び方になります。
主語をやたらと省略して話す日本語と比べて、韓国語はそれほど主語を省略しないように思います。年齢がわからないと、呼称が決まらない。話しかけようにも話せない、親しくなろうにもなれない…というもどかしい状態になるのだとか。
親族の呼称のバラエティー豊かさはよく知られていますが、そのほかにも、韓国では呼びかけるときに「すみません」のようなニュートラルな言葉を使わず、呼称で呼びかける風習がまだまだ残っています。
私はごく普通の既婚アラサー女性ですが、これまで韓国に住んで数年、実に色んな呼び方で呼びかけられてきました。以下、簡単にまとめてみます。
|
|
親族の集まりでは、呼称に要注意
|
同僚を呼んでのチプトゥリ
|
アジュンマ(おばさん)
韓国では、どんなに若くても結婚した瞬間からアジュンマと呼ばれる。そう聞いてはいましたし、となるとアジュンマと呼ばれるのは正しいのでしょうが、やはり気分は良くないものです。
単純におばさんという中年イメージと、傍若無人にふるまう韓国最強アジュンマと自分は決して同じカテゴリーではないという拒否感もあるかもしれません(笑)。
ハクセン(学生)
あるとき、うっかり信号無視をして横断歩道を歩いていたら近くにいたらしいアジョッシから「ハクセン!」というお叱りの声が飛んで来ました。まさか自分のことだとは思わなかったのですが、そのとき周りにいたのは私だけだったので、きっと私に対して言っていたのでしょう…。
アガシ(お嬢さん)
道を聞かれるときより、東大門総合市場などの婚需(ホンス、韓国で結婚前に新婦側が家電や家具を準備するもの)売り場で売り子のアジョッシからそう呼ばれることが多いです。最近の若い人はアガシ=水商売の女性、というイメージがあるらしく、アガシと呼ばれることを嫌う女性も多いとか。
オンニ((女性から)お姉さん)
年下の女性からオンニと呼ばれるのは、個人的には苦手です。言葉とは不思議なもので、本当に姉のように、あれこれと世話をやいたり、余計なお節介をしたくなってしまうからです!
たまに、明らかに年上の女性からオンニと呼ばれることも。おそらくアガシと呼ばれることを嫌う若い女性が多いことをご存知で、それでも親近感をもって話しかけようとされているのではと思います。
ヌナ((男性から)お姉さん)
年下の男性からヌナと呼ばれるのも、苦手です。お節介したくなるのに加え、距離が近すぎるように感じるからです。自分がまだもう少し距離を保って付き合いたいと思っているのに、いきなりその範囲を飛び越えて懐に入ってこられたようなとまどいを感じます。
ソンセンニム(先生)
仕事をしていて、取引先からこう呼ばれたり、たまたま自分が知っていることを教えたりした際に、こう呼ばれることがあります。非常に恐縮で、違いますから!と固辞したくなります。また、「コゲンニム(お客様)」の代わりに「ソンセンニム」や「サジャンニム(社長)」と呼ばれることも。
ある不動産屋さんでは、一人の職員が3人の人をサジャンニムと呼んでいました。家を見に来た主人も「サジャンニム」、家を売りたい人も「サジャンニム」、不動産屋の店主ももちろん「サジャンニム」。まぎらわしいことこの上ないのに?と韓国人の主人に疑問をぶつけると、でもそう呼ばれて気分の悪い人はいないでしょ、という明快な答えが返ってきました。
イモ((母方の)おばさん)
日韓夫婦のお子さんに会ったとき、自分のことをどう言うか迷います。幼い子どもの前で、一人称「わたし」を使うのはためらわれ。自らおばさんと言いたくもなし、自分と変わらない年のお母さんの子どもに、お姉さんとも言えず…。
先輩奥さんのアドバイスで、「イモ」を使うようになり落ち着きましたが、それを実家の両親に話すと爆笑されました。いや、芋とはアクセントが違うんだと言っても笑いすぎで全く聞いちゃくれませんでした。
エギオンマ(子どものお母さん)
駅の通路を電話しながら歩いていたら、後ろから「エギオンマ!」と大声で呼ぶ声が。アジュンマが誰かに叫んでるなあと思いながら気にせず歩いていたら、だんだんその声が近付いてきてついに袖をつかまれました。
私のことだったの!?と驚いて振り返ると「~駅はどっち!?」と咳き込むように聞いてくるアジュンマ。
私子どもいないし…ていうか電話中なんですけど…と思いつつ、アジュンマは人が何をしているかなんて、全然見ていない。そういう注意深さがあれば、行きたいところがどっち方向かなんてすぐわかったでしょう。
韓国にはこういう突然道を聞いてくるアジュンマがものすごく多く存在します。面食らいつつも即答してしまった私は韓国社会に適応しつつあるのか…と思うとエギオンマと呼ばれたこともあわせてダブルで微妙な気分に。
|
|
韓国名物、地下鉄の行商
|
アジョッシ、アジュンマのパワーを感じる南大門市場
|
|
|
エギはアギ(赤ちゃん、幼い子ども)をかわいく言う言葉
|
韓国に深く根付いている儒教文化
|
以上、呼称あれこれでした。日本人と韓国人では人と付き合うときの距離感が違い、日本人はある程度の距離をもって付き合おうとするように思いますが、韓国人は近い。スキンシップも多い。
初対面でも顔と顔を突き合わせるように話をされて、全力で後ろに下がりたくなる気持ちをこらえたり。日本では「袖振り合うも他生の縁」という言葉がありますが、韓国では「腕ぶつかるも日常茶飯事」で気にしちゃいられないというか…。
でも、関係性を築くのに時間がかかりがちな日本と比べ、韓国では初対面でもオンニ、
ヒョン
などと呼び合うことによって、すぐに親しくなれるのも確か。言葉には、文化が現れるものなんだなあとつくづく感じるこの頃です。
編集部:ふぐやん