今冬の韓国映画は注目作が目白押しだったが、結局一番の成功を収めたのは、意外や意外、チャン・ドンゴンの「タイフーン」でもなく、クォン・サンウの「美しき野獣」でもなく、全く期待していなかった「王の男」だった。このダークホースとも言える「王の男」、朝鮮時代の悪名高い王として記録されているヨンサン王と、彼に気に入られた大道芸人の話なのだが、いやあ、面白かった!!
韓国の伝統文化をベースに描いた正統派史劇でありながらも、笑いどころ満載で、男同士の愛を描いたというのがまた新しく、それでいていやらしくない。韓国の昔の大道芸人「クァンデ」の生き様を描いたあたりは、なんとなく香港映画の「覇王別姫(さらば、わが愛)」ぽいかもしれない。「これは名作なのでは?!」と、見終わったあとはすっかり興奮してしまった。
普通、観客は公開されてから時間がたつと減っていくものだが、この「王の男」は、クチコミにより公開後にどんどん増え続け、なんと13日には1000万人を超えてしまった。今週末には「シルミド」の記録を抜き、歴代韓国映画興行記録の2位になる見込みだそうだ。
「タイフーン」はスケールが大きくてハリウッド映画でも見ているような雰囲気だったけど、それとは対照的に、「韓国映画」らしさをじっくり感じた映画だった。それが成功の要因だったのかもしれない。
韓国には、40%以上を自国の映画を上映することを義務付けた「スクリーン・クオータ制度」というものがある。今ちょうどこの制度が縮小されてしまうことに反対して俳優たちがデモを行なっている。それには批判の声もあるけど、今日のように韓国映画が発展したのはこの「スクリーン・クオータ制度」のおかげともいえる。韓国でも日本のように洋画ばかりが上映されるようになってはサミシイ。韓国映画好きの私としては、そうならないように願うばかりである。(編集部:mmkim)